円形脱毛症は誰もが一度は聞いたことがあると思いますが、頭髪の一部、もしくは複数の箇所が円形や楕円形に脱毛する疾患のことをいいます。脱毛範囲が頭部全体に広がるケース以外にも、眉毛や体毛に及ぶ重症なケースまであり、様々です。
脱毛部分の大きさが10円玉程度になったときに気づく人が多く、人からの指摘で気づくケースも多いです。
ストレスが原因のイメージが強い円形脱毛症ですが、具体的にどんなことが原因となり、対策はあるのかどうかをこちらの記事でご説明します。
1.円形脱毛症について
円形脱毛症は男性だけではなく、女性でも子供でも発症する可能性がある疾患です。円形脱毛症を発症する割合は人口の1~2割といわれています。
子供の頃は円形脱毛症と似た「抜毛症」という症状があり、思春期の子供に多いものですが自分で髪を抜いてしまいます。抜毛症は自分で髪の毛を抜いてしまうので円形脱毛症とは別の病気です。
またAGA(男性型脱毛症)とも混同されがちですが、症状や進行具合に違いがあります。
AGAでも円形脱毛症でも人により進行状況が異なるため一概にはいえませんが、一般的にAGAは頭頂部や髪の生え際から抜け毛がゆっくり進行し、円形脱毛症は急速な勢いで短期間に脱毛する点が異なります。また、円形脱毛症は脱毛部分が円形状になり周囲との境目が分かりやすいところも特徴です。
円形脱毛症は頭皮に限らず、眉毛や体毛が脱毛する場合があり、脱毛の速さは個人差があり、徐々に抜ける人もいれば、一気に抜けてしまう人もいます。
円形脱毛症を発症した約3~4割の人が完治した後にまた繰り返し発症することがあり、円形脱毛症の原因を排除することが再発防止には重要です。
2.円形脱毛症には種類がある
円形脱毛症は様々なタイプがあり単発型、多発型、蛇行型、全頭型、汎発型などに分かれます。
<単発型>
単発型は円形脱毛症の中で最も多くみられるタイプで、脱毛範囲の大きさは10円玉から500円玉くらいで、80%ほどの人が1年以内に完治するといわれています。まれに多発型に移行し重症化する場合があります。
<多発型>
多発型は脱毛部分が2箇所以上に発症し、適切な治療をしても完治するまでに半年~2年ほどかかる場合が多いといわれています。脱毛部位が結合して多発融合型になる場合もあります。
<蛇行型>
蛇行型は後頭部から側頭部の生え際にそって蛇のように脱毛が広がるタイプで、治療に数年かかる場合があります。
<全頭型>
全頭型は脱毛斑が頭部全体に広がって、最終的には頭髪が全て抜け落ちてしまうタイプです。非常に治りづらく治療は長期に渡ります。そのため治療をしながらウィッグ(かつら)を使用するなど円形脱毛症と上手く付き合っていく必要があります。
<汎発型>
汎発(ばんぱつ)型は症状が進行し、頭髪だけではなく眉毛やまつげ、体毛など全身全ての毛が抜け落ちてしまうタイプで円形脱毛症の中では最も重症度の高いタイプです。全頭型と同じく、治療を行いながらウィッグ(かつら)を利用するなどの工夫が必要でしょう。
3.円形脱毛症の原因は?
円形脱毛症の原因は様々な説が提唱されていますが、どこに当てはまるのかを見てみましょう。
【自己免疫疾患】
近年、円形脱毛症の原因として有力視されている「自己免疫疾患」。
自己免疫疾患が聞き慣れない方もいるかと思いますが、外部からの侵入物を攻撃することで体を守ってくれている免疫系の機能に異常が生じて、自分の体の一部を異物とみなし攻撃をしてしまう病気です。そもそも免疫機能の異常を発生させる要因は、疲労や感染症などストレスや体質的なものと考えられています。
円形脱毛症はTリンパ球が毛根を異物と間違えて攻撃してしまって発症すると考えられていますが、なぜそのような異常が生じてしまうのかは明らかになっていません。
【アトピー素因】
アトピー素因とはアトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎)を持つ人のことをいいます。円形脱毛症になる人の約40%以上はアトピー素因を持つといわれていて、深い関係性があるとされています。
【ストレス】
円形脱毛症の発症の原因として挙げられるストレス。精神的ストレスを受けると、ストレスに抵抗するために交感神経が活発に働きますがストレスが強すぎたり長期間続くことで交感神経に異常をきたします。
結果、血管収縮により頭部への血流が悪くなって、毛根へ栄養が届かなくなり脱毛が起こると考えられています。そしてストレスは毛根への栄養補給の妨げをするだけではなく、自己免疫疾患など様々な疾患を誘因するともいわれます。
【栄養素の不足】
頭部への血流不足によっても引き起こされる円形脱毛症。
亜鉛や鉄分などのミネラルといった特定の栄養素が不足することで、貧血や円形脱毛症が起こるといわれています。食生活が乱れている方はこれらの栄養素を意識して摂取するとよいでしょう。特に女性は毎月生理があり貧血を起こしやすく、積極的に鉄分や亜鉛を摂り血液の不足を解決することで円形脱毛症の改善にも繋がります。
【出産後のホルモン変化】
出産後の女性ホルモン減少も原因の一つです。妊娠中は体内の女性ホルモン値が100倍以上に増加しますが、出産を終えると一気に通常値に戻ります。女性ホルモンには発毛促進の作用があるため、女性ホルモンの減少は抜け毛につながります。
産後すぐに抜け毛が増えるのではなく毛周期との関係もあって産後3~4ヶ月後に抜け毛が目立つようになります。この場合、多くの人が頭髪全体のボリュームが減る産後脱毛ですが、円形脱毛症になる人もいます。
ホルモンバランスだけではなく、育児の疲労・ストレスや食事の偏りなども原因になるので気をつけましょう。
【遺伝的要素】
中国で円形脱毛症について大規模な調査が行われ、その報告によると円形脱毛症患者の約8.4%に同じ病気を抱えている家族がいるそうです。親等が近いほど発症率が高く、欧米の調査でも一親等の発症率は二親等以上の家族の10倍にも及ぶという結果が出ており、円形脱毛症には遺伝的要素が関係する確率が高いといえます。
4.円形脱毛症になったときの治療法は?
円形脱毛症を完全に治すための治療法はまだ確率されていませんが、それぞれの治療法の効果の高さやリスクなど明らかになってきました。
【ステロイド局所注射】
炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを脱毛斑に注射する治療法です。
症状がなかなか改善しない単発型や、多発型の成人患者に使われることがあります。発毛効果が高い反面、ステロイドの副作用を考慮して子供には行わない治療法です。注射時に強い痛みを伴い、副作用として注射部位が陥没する可能性があるので注意しましょう。
【局所免疫療法】
人工的にかぶれを起こす化学試薬を使い、かぶれを起こさせることによって発毛を促す治療法です。
脱毛が比較的広範囲に及ぶ患者に行われる治療法で、子供にも利用できます。約9割の人に発毛効果があるといわれていますが、副作用としてかぶれや蕁麻疹など起こすことがあり、アトピー性皮膚炎や湿疹がある人は症状が一時的に悪化する場合もあります。
治療期間は半年から一年以上取り組む必要があります。
【内服薬や外用薬の使用】
円形脱毛症の治療に内服薬や外用薬も使用されており、効能が確認されています。医師の診察を受け、処方してもらいましょう。
【冷却治療】
ドライアイスや液体窒素などを脱毛斑に当てて、誤作動を起こした免疫細胞の働きを抑えて毛髪の再生を図る治療法です。治療の際には軽い痛みがありますが、副作用もほとんどない簡単な治療法です。
【紫外線療法】
アトピー性皮膚炎などの皮膚病の治療にも行われる療法です。回数や頻度は症状によって異なり、2週間に1~6回程度を数ヶ月にわたり治療を行います。紫外線を照射するので、副作用として、肌の炎症が起こりヒリヒリしたり、かゆみ、水ぶくれが起こる場合があります。
広い範囲で脱毛する全頭型や汎発型で治療効果があったと報告があり重度の患者に使用されます。子供の治療には使用できません。
まとめ
円形脱毛症の治療法についてご説明しました。
様々な原因が考えられる円形脱毛症ですが、治すまでにはある程度時間がかかります。
まずは専門のクリニックに相談して、適切な処置を取るようにしましょう。